旅する情報系大学院生

旅と留学とプログラミング

CERN語

最近CERNにいる期間が残り少ないことに気付いてメランコリーな気分になったので忘れないように思ったことを纏めます。

CERN語について

CERNでの公用語は英語とフランス語。オフィシャルなメールなどは英語+フランス語で送られてくるがたまにフランス語だけなこともある。事務系の仕事はフランス人またはフランス語が流暢なイタリア人が多いからだと思う。CERNの英語はCERinglishと言われるくらいひどく、色々な国の人が好きなアクセントで好きに話している。

CERNで働く物理学者なら大学ごとに部屋やチームが閉じているので日本人なら日本語会話だけで仕事することも可能(というか多い)らしい。私がいるROOTチームは日本人は一人だが、英語のネイティブスピーカーが一人もおらず英語のレベルは全体的に高くないので、英語で劣等感を感じたり苦労することは特になかった。フランス人特有のアクセントはお世辞にも上手いとは言えないし、ミーティングで英語でなんて言うか分からない単語があったらフランス語で言ってみてそれが分かった人が英語で言うみたいな事もあるので、私のチームでは英語の能力はあまり必要ではない。

色々な言語を話す人がいるので、その場にいる人の最大公約数を取って言語を選択するというのがよく行われる。例えばイタリア人二人とスペイン人ならイタリア語あたりに落ち着くし、ドイツ人とフランス人ならフランス語で話しているし、post-USSRの国々の人々が集まったらロシア語で話している。別に何語で話してもいいのだ。

私はアングロサクソン至上主義みたいなのが嫌いで、日本人が海外で仕事をする時にアングロサクソンのカルチャーに合わせないといけないという強迫観念のような物を持たなくてもいいと思う。ちゃんと喋れてさえいれば完璧なアクセントでなくてもいいのだ。聞き返されたら聞き取れなかった方が悪いのだ。アングロサクソンのアクセントでないことを恥に思う必要は全くないのだとCERNの人々を見て思う。

英語について

上手い人は上手いし下手な人は本当に下手。でも正直そんなことはあまり関係なく、当然技術的な実力の方が重視される。意思疎通さえしっかりできれば良いのだ。

小学生の時1年間イギリスに住んでいた事があり、帰国後も割とちゃんと勉強していたのでそれくらいのレベルで別に困らなかった。稀だが、会話の中で聞いたことない単語があればその場で意味を聞いているし相手も分からなかったら聞いてくる。英語のレベルが云々より堂々としていること、伝えるだけの内容を持つこと、ちゃんと相手に分かりやすいように説明をすることが大事である。コミットメッセージのタイポはたまに指摘される。

フランス語について

ジュネーヴはフランス語圏なので、当然日々の暮らしではフランス語が必要である。CERNに勤める人々は基本的なフランス語会話はできる場合が多い。

私は出国前にDuolingoのフランス語を40%くらいやってから行ったが、最初はそもそも相手が言っている単語をパース出来なかった。無声音やリエゾンなどがありごにょごにょ言っているようにしか聞こえないのだ。しかし流石に日々暮らしていると色々と慣れ、まずはトラムの駅を通過するごとに駅名の読み方を覚えトラムのアナウンスを覚え料理を注文する時によく使う表現をフランス人に教えてもらい・・などしているうちに買い物などをするだけなら困らないようになった。ちゃんとした会話ができるレベルでは到底無いが、ちゃんとした会話をしたいと思う相手は英語が喋れるので困っていない。フランス語は困らないレベルに達したらあまり勉強しなくなってしまった。

スペイン語について

CERNにはドイツとイギリスが最大の出資をしているにも関わらず、CERNにはラテン系の人が多い。理由としてはイタリアやスペイン、ポルトガルなどでは賃金が高く無いので研究者はCERNに来たがり、イギリスなどではすでに高いのでわざわざ応募するインセンティブが無いのだろう。故に日々聞こえてくるスペイン語も多い。

前期教養の時に友達が選んだからという理由でスペイン語を選んだ。授業ではあまり真面目にはやっていなかったが、2016年に南米に1ヶ月旅行に行った時に南米はスペイン語しか通じないので死ぬ気で勉強した。本当に英語が全く通じなかった。結局南米が大好きになり、その後も継続的に勉強したりスペイン人を見つけては練習台になってもらったりしている。スペイン語話者はフランス語話者と比べて適当な文法でも分かってくれるしちょっと話せると喜んでくれるし親切に教えてくれるし最高である。

ドイツ語について

ドイツ人はドイツ語のことをEnglish++と言っている。ドイツ人は英語が平均的に上手いのでドイツ語を勉強する必要はあまり無い。

私は中学の時に中二病でNANAを聞いたりドイツ語を齧ったりしていた。去年の冬に自分の中でドイツ語ブームが訪れDuolingoを50-60%くらいやったりドイツ語選択の教科書貸してもらったりドイツ人にドイツ語でメッセージを送りつけるなどしていた。スイスの四つの公用語のうちの一つがドイツ語で、話者も多いのでBernやZermattに行くときはお店で使うかなくらい。ドイツ人もフランス人と比べるとちゃんとドイツ語聞いてくれるし優しいしで最高である。

ロシア語について

ここ最近のブームである。CERNに来て1ヶ月もしない頃から同僚から聞いてもいないのにロシア語のアルファベットиの読み方をいきなり教えられたのが始まりだった。何故か私の周りにはpost-USSRの人々が多いのでオフィスでの会話の大部分がロシア語で、流石に一日中聞いていたら脳内頻度分析がされ「もーじゅな」「はらしょー」「やにぱにまーゆ」ってよく言ってるなあとは分かってくるものである。

その後も事あるごとにロシア語のアルファベットや単語をたまに教えられその都度へーと思い、カチューシャをロシア語で歌えるように練習して歌詞で出て来たアルファベットの読みを覚えなどやっているうちにキリル文字がなんとなく読めるようになった。先日ウクライナに行って惚れ込んでからはロシア語話者を練習台にして迷惑がられている。