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東京に帰ってきた情報系東大生です

ヨーロッパで学んだワーク趣味バランス

ヨーロッパで生活する前までの私は完全に進捗以外眼中に無いタイプでした。東大は競争の激しい環境で、特に理系で理学部だと朝から晩まで勉強しているのが美徳でそれ以外の活動をするのは時間の無駄というような雰囲気があり、「お前が休んでいる間に他の人は進捗を生んでいるぞ。亀が努力しなくてどうするんだ。」みたいな思考で時間を取られそうな趣味のことは出来るだけ考えないようにしていました。ヨーロッパの研究所で働いていた副作用として仕事と仕事以外の楽しみというのは車輪の両輪で、どちらもバランスを取りながら前に進むことができるという事が分かったような気がしたので、その話をします。

滞在中何回も一緒に旅行に行ったイタリア人の友達がいます。彼女はイギリスのトップ校C大学で博士号を取得した後サイエンスライターになり私がいた研究所で働いていました。彼女は数え切れないほどの(もはや覚えていない、日本、インド、韓国、ミャンマーアメリカ、ドイツ...などなど)国で暮らし、5ヶ国語が流暢に話せ、3ヶ国語がどんな話題でも話せる程度に話せ、既に流暢に話せる言語も慢心せず毎週人と会って練習していました。半年前くらいにプログラミングの勉強をしたい!と言いながらプログラミングの勉強も始め、彼女の興味範囲は多岐に渡っています。昼休みにも仕事の後にも常に誰かと会う約束を入れ、ぼーっとすることなんて無いのではないかというくらいイベントが詰まっているようでした。待ち合わせの場所に行くと分厚いフランス語の教科書を座って読みながら待っていたり、パソコンで仕事をしながら待っていたりと暇さえあれば何かをやっているようでした。放っておくと引きこもってしまう私を常に仕事の後や週末のイベントに誘ってくれており、何故か私のことを面白いと思ったらしく一緒に行動してくれたのは非常に嬉しいことでした。

彼女に初めて会った時はショックを受け、こんなにエネルギッシュかつ優秀な人間が存在して良いのかという気持ちになりました。何より感心したのは、仕事を凄く頑張り誰もが羨むようなキャリアを持ちながらも仕事以外の全く関係ない分野や事柄にも非常に活動的で、人生を本当の意味で満喫しているように思われたことです。

年齢差もあり友達とは言えないですが、それなりによく話していた研究所の機械学習のチームのリーダーをしているイタリア人の女性がいました。彼女は物理学の博士号を持ちながら今一番ホットである機械学習のチームで重要な仕事をしており、普段は非常に忙しそうに研究所内を駆け回っていました。同時に、彼女は家庭を持ちながらバイクに乗ったりスキーをしたり旅行に行ったり、忙しい仕事の合間に少しでも暇を見つけ出して全力で楽しんでいるように見えました。

程度の差こそあれ、ヨーロッパの人々は人生というのを大切にします。ここで例に挙げた人は特にエネルギッシュですが、彼女達だけではなく皆全体的に仕事以外の人生を楽しんでおり、そのことを周りの人が肯定的に評価するという雰囲気がありました。反面、東大では少しでも遊んだり楽しんだりしている人は「リア充」「ウェイ」と呼ばれ、進捗しか生んでいない人に比べるとあまり肯定的に評価されない土壌があると思います。

何か上を目指したい人が駆け出しの時は非常に焦燥感に駆られます。自分は他の人より才能が無いから努力で埋めないといけないとか、休んでいる間にライバルに抜かれるだとか、そういう感情は誰にでもあり、真実でもあると思います。そして、楽しんでいる人を小馬鹿にするような雰囲気はその傾向を助長します。私が引用したヨーロッパの人々は家庭や趣味が仕事より大事だと思っているわけではなく、どちらも大事だからどちらも充分出来るように頑張るという姿勢で、逆に仕事"だけ"に集中することを奨励する姿勢より責任感があると感じました。

もちろん誰がどう生きるかというのはその人個人の選択ですが、私は幸運にして素晴らしい実例に出会うことが出来たので、少なくとも受験期の高校生のような「他にやりたいことがあるのにそれを押し殺して進捗をひたすら生む」といった方針の見直しに迫られました。私はどちらかというとやりたいことが多く興味の幅が広いタイプで、情報科学は私の中の無限にある好きでやりたいことリストの一つなので、それの進捗を生むためだけに好きな語学などが出来ないのは自分と自分の可能性を殺しているようにずっと感じていました。バランスが非常に取れた彼女達の存在は、「他の好きなことをやって進捗を生んでいない時間に罪悪感を感じなくていい、自由に自分の好きなことをしていい」ということを教えてくれた気がします。

とはいえ、進捗を頑張らないといけない時期も存在し、私にとっては今がその時です。終わったら好きなことを心ゆくまでしたいです。

追記

記事の内容を少し変更しました(5/18)。ワークライフバランスと書きましたが自分が伝えたいのはワーク"趣味"バランスの話だと気付いたのでタイトルを変えました。