前回のPart 1に引き続き、今回はアカデミア就活の書類準備について書いていきたいと思います。
北米でのアカデミア就活では、Research statement, Teaching statement, 3-4通の推薦状, Cover letter, CVが必要になります。場合によってはDiversity statementを要求されることもありますが、トランプ政権がDEIに圧力をかけている影響で、Diversity statementが必須の大学が昔よりも少なくなっている印象を受けます。
毎年11月から12月にかけてどの大学も公募の締め切りがあるため、公募に出す年の秋から準備をする必要があります。私は8月の終わりにはstatementの第一稿を書き上げ、9-10月に複数の知り合いの教員から添削をして頂きました。
書類審査がアカデミア就活の第一関門で、千人弱の候補者の中からZoom面接をする数十人に絞られます。
推薦状
博士課程への出願と同じく、おそらく全ての書類の中で一番大事なのは推薦状です。どの大学の公募も、3から4通の推薦状を出すことが必須となっています。推薦状は推薦者が応募者を介せず直接大学に提出するので、内容を見ることは絶対にできません。博士の指導教員に推薦状をお願いするのはもちろんのこと、それだけでは4通に届かないことがほとんどだと思うので、外部の共著者などにお願いすることも必要です。いずれにせよ、推薦者は大学教員が望ましく、自分の研究を深く理解した上で将来性を感じてくれ、「こいつは将来絶対に大物になる!」と太鼓判を押してくれることが必要なのかなと思います。
内容は自分の力ではどうにもなりませんが、誰に頼むかは自分で決めることが出来ます。私は、指導教員から1通、CMUとUWの共著者から2通、UC Berkeleyの教員から1通の合計4通の推薦状を書いて頂きました。結果的に就活が上手くいったから良いのですが、私の推薦者は皆比較的若手(Associate/Assistant)だったため、もっとシニアな教員の方が良かったのかなと、公募に出す前は心配でした。また、私はMIT外との共著が多かったため指導教員以外はMIT所属ではない教員にお願いしましたが、これは私のネットワークや研究のインパクトを示す上で悪くは無かったのかなと思っています。本当のところ、何が評価されたのかは分かりませんが...。
強い推薦状というのは一朝一夕で書いてもらえる訳では無いので、皆に認められるような良い研究をしつつ、共著者との関係も良好に保つことが大事だと思います。
Research Statement
自分で書く書類の中では一番大事な書類がResearch Statementになります。長さはLetter sizeで4ページで、最後の1ページをFuture workに当てるのが一般的だと思います。
分野によって色々書き方は異なると思うのですが、私の場合は1ページ目の最初の二段落に研究分野のイントロと私の研究のインパクト(どの企業で使われているか等)を書き、1ページ目の残りは研究の大まかな概要を書きました。2,3ページ目はもう少し具体的な研究内容(それでもだいぶざっくり)で、4ページ目をFuture workに当てました。添削をお願いした指導教員からは、最初の二段落以上読まれることは稀だから、最初のページはとにかくインパクトを強調しろとアドバイスを受けました。
初稿の段階では8ページ以上あり、極限までストーリーを綺麗にするという添削に時間が掛かりました。
Research statementは同じ書類を全ての公募で使い回しました。それで別に問題無かったと思います。
Teaching / Diversity Statement
TeachingとDiversity StatementはResearchに比べると重要性は低いようですが、私はResearchと同じくらい力を入れて書きました。個人的には、研究所の研究者と大学教員を大きく分けるのは学生の指導の有無なので、教える事を重荷と感じる人は教員に向いてないのではないかと思います。教育に関してもダイバーシティに関しても私は言いたいことが色々とあるので、どちらもスムーズに書けました。
TeachingはLetter size 2ページで、過去の教育の経験、どのような授業をしたいか、メンタリングの経験、どのようなメンタリングをしたいか、などについて書きます。私は過去にTAをした経験やMITの学部生や修士生のメンタリングをした経験や、授業におけるLLM利用についての自分の見解等も書きました。最後の段落にはその大学においてどのような授業を教えたいのかを書くのがお決まりだと思います。ここは大学によってカスタマイズが必要で、私はスプレッドシートに各大学が開講している授業や公募のリンク、締め切り等をまとめていました。
Diversityは必須とする大学は少ないのですが、私は自分のDiversity Statementが出した書類の中で一番気に入っているレベルで好きだったので、必須とされていなくても追加書類として提出しました。私はダイバーシティを大切にしている人間で、自分の思想と合わない「ダイバーシティ嫌い」な大学には絶対に行きたくなかったので、Diversity Statementには自分の思想をそのまま書きました。MIT日本人会の会長や海外大学院学生会の副代表をやっていたこと、また私のブログ記事がきっかけで東大が前期教養のクラスで女子学生を6人以上まとめるようになったこと、またアメリカではジェンダーによる差別よりも社会階層による機会の損失が大きな問題であるというような事を書きました。
TeachingとDiversityは研究以外の自分の性格や個性を出せる書類だと思います。個人的なスタンスとしては、私は自分と政治的思想が合わない大学には絶対に行きたくなかったため、自分の主義主張をそのまま書きました。ただ、面接でTeachingやDiversityの内容について聞かれることは一度もなかったため、選考にどの程度影響しているのかは謎です。
公募に出すタイミング
ポスドクに行ってから公募に出すのか、在学中に出すにしても何年目で出すのか、皆迷うと思います。GPAやテストの結果が数値として出る受験に比べて、研究者の評価は同じ分野内でもなかなか難しく、自分が「一目置かれる」研究者なのかどうか、公募に出したとして何かに引っ掛かる可能性は少しでもあるのかは、判断が難しいと思います。「公募に出す自信が付いたら」公募に出すべきだと思いますが、いつ、どのタイミングで自信が付くのかが問題になります。私の指導教員はどちらかというと無関心で、アカデミア就活の背中を強く押してくれる感じでは無かったため、私は外部の教員から背中を押されることでオファーが出る可能性がゼロではないと感じ、公募につながりました。
コンピューターサイエンス分野だと、博士課程の学生を対象としたRising Starイベントが複数あり、他の同年代に比べて自分がどの程度の立ち位置にいるのか知れる、ある程度明示的な指標になっていると思います。前回のブログにも書いた通り、4-5年生の時にMLSys Rising StarやEECS Rising Starといった、厳しい選考があるRising Starイベントに採択して頂くことができ、そこで選考に関わった教員に「Your application was outstanding! You should definitely apply to my school」等言って頂き、公募に出す自信が付きました。
指導教員のラボから私を含め去年は3人出しましたが、最終的に一つでもオファーが出たのは私だけでした。推薦者が複数の推薦状を書く場合、「この候補者はこの候補者より良い・悪い」など赤裸々に評価する事もあるらしく、ラボ内で公募に出すタイミングも調整した方が良いのかなと思います。
公募を考え始めたら
私はアカデミア就活を意識し始めてから、MITに面接しに来る候補者のウェブサイトに行き、CVやStatementを保存していました。2年間、候補者のjob talkがアナウンスされるたびにそれを繰り返しているとそれなりに資料が溜まり、自分が応募書類を書くときの参考になりました。
また、自分より先に就活を経験する先輩とは仲良くした方が良いと思います。去年の3月ごろ、一緒に学会に行ったついでにドイツを旅行したUC Berkeleyの友達が当時絶賛アカデミア就活中で、旅行中に彼女と話しているだけでも就活へのイメージが湧き、心構えが出来ました。
どの大学の公募に出すか悩むかもしれませんが、絶対に出せるだけ多くの公募に出した方が良いです。最終的にオファーが多い方が給料やスタートアップパッケージの交渉がしやすいことはもちろん、面接の段階ですら、より多くの大学からお声がかかっていた方が呼ばれやすいという、鶏が先か卵か先か問題があるからです。0.001%でも行く可能性がある大学の公募には出した方が良いと思います。私はUS News CSランキングの上位30校+イギリス・ヨーロッパ・シンガポールの上位数校に出しました。結果的に沢山オファーを頂けたので良かったですが、もっと出した方が良かったくらいだと思います。
北米以外の大学については、自分が少しでも行く気がある上位校かつ、北米の大学と同じ書類(Research/Teaching statements, CV等)が使いまわせる公募にのみ出しました。
公募サイト
公募の宣伝が出るウェブサイトは以下の通りなのですが、ノイズが多い上に網羅的では無いため、10-11月は「大学名 + computer science faculty opening」でよく検索していました。もっと効率的にやる方法が知りたい...。
https://academicjobsonline.org/ajo/cs
https://www.higheredjobs.com/faculty/search.cfm?JobCat=102&CatName=Computer+Science
https://careers.insidehighered.com/searchjobs/?Keywords=computer+science
私は情弱だったため、同じ時期に公募に出していた友達に色々と助けてもらいました。
また、去年はhiring freezeしている大学が多かったため、「この大学の公募出てないよね...?」という確認をよくその友達としていました。公募が出ているのに見落としたらだいぶ嫌なので...。
やっておけば良かったなと思うこととして、公募(Job posting)のページをpdfにして保存しておけば良かったと若干後悔しています。Job postingには給料や募集人数等色々な情報が書いてありますが、公募の締め切りの後ページが消されてしまうことがほとんどのため、オンサイト面接やオファーが出た際に見返せるよう、ダウンロードしておくべきでした。
次回は、Zoom面接について書こうと思います。